貴方の好きな所

ウィルの何処が好き?と聞かれたらアタシは迷わずこう返すと思うワ、【全部】って。
まあ一つに絞るとしたら勿論あのかっこいい見た目なんだけど、でもそうねアタシはウィルのものだったら何でも好きよ。上から下まで全部愛してるんだから。

「…と、いうわけでウィルはアタシの何処が好きなのかしらネー?」

ニンマリと笑んでウィルを見やれば、ウィルは心底うざそうにアタシを睨んだ。ンフ、そんな冷たい瞳も大好き!って言ったら今度は目をそらされちゃった。

「ねーえっ!どうなのヨ」
「…グレル・サトクリフ、そんなくだらない事を考えている暇があるならば仕事をしたらどうですか?」
「いやヨ、めんどくっさい」

恋バナする時間はあっても仕事する時間はありませーんだ、仕事なんて退屈でストレス溜まるばっかで全然いいことないんだもの。
ウィルみたいに【仕事が趣味】な人でなきゃ無理ね。

それよりも…

「くだらない事って何ヨ?アタシにとっては大事な事なんですけど」
「貴方にとってはそうかもしれませんが、私にとっては心底どうでもよくてくだらないものですよ」

なによなによ、クールぶってやんの!

「それじゃあ何、ウィルはアタシの事なんも好きじゃないっての?」
「そんな事は言っていませんが」
「どっちなのヨ」
「……………今ここで言う必要は無いと言いたいんです、第一此処は職場です、場をわきまえたらどうなんですか。」
「…っ」

ウィルの言っている事は正しいとは思うけど、何もそんな言い方しなくたっていいじゃないの。「好き」って一言言ってくれればいいじゃないのよ…馬鹿。

「わかったわヨ!じゃあアンタはアタシの事どーでもいいってワケなんでしょ、仕事のほうが好きなんでしょ!馬鹿馬鹿!アホ眼鏡!」
「なっ…」

気付いたら目からぼろぼろ涙が出てきちゃってて、アタシはそれを見せないようにウィルのいる部屋から出ていった。

「…女心をわかってないのヨ、ウィルは」

オフィスから飛び出て、そのままの勢いでやってきたウィルの部屋でアタシは一人ベットに顔をうずめて泣いていた。こんな事くらいで泣くなんてアタシって意外と純粋だとかガラスのハートとか思った。…誰今んなこたあ無いとか言った奴。

大体ね、いつもいつもいつもいつも、ウィルはアタシの事大切にしなさすぎなのよ。そりゃあいつもアタシが迷惑かけてるから、アタシにかまう時間も無いんだろうけど誕生日や記念日くらいそばにいてほしいし、愛のある台詞の一つ二つウィルの口から聞きたい。

つまり…つまりよ?アタシはウィルの事すごくすごーく愛してるんだってば。

「なんでわかってもらえないのヨ」
「人の部屋で何してるんですか、貴方は」
「…っウィル。なんで此処にいるのよ」
「…言っておきますが、此処は私の家ですからね」
「あ」

アタシったらうっかりウィルの家に来てたんだった。でも何でこんな早く帰ってきたの?

「!…ウィルったらアタシの事追い掛けてきてくれたのネ」
「迷惑をかけたことを理解しているなら少しは反省してはいかがですか」
「ごめんなさい、でも…ウィルがいけないのヨ、私の話した事くだらないだなんて言うから」
「…本当の事でしょう」
「…くだらないかもだけど、でも……ねえ、アタシはウィルに愛されてないの?」

ウィルは呆れたようにため息をついた。

「愛してないわけがないでしょう」

そっ、と感じた温もりにウィルに抱きしめられているんだと気付いた。あまりにも急だったので声もはっせずに黙っていると、続けてウィルは言った。

「どんなに迷惑をかけられても、許せるのは貴方だけです。他の奴らがどんなにミスをしても私はフォローしません。貴方だから助けるんです」

この意味がわかりますか?と視線を向けられアタシはこくんと黙ってうなずいた。

「一回だけですからよく聞いていてください。

貴方の全てを愛してますよ、グレル…」
「…ウィル」

【貴方の好きな所】

(だったら素直に、さっきそう言ってくれればよかったじゃない)(…だから、場をわきまえてくださいと言ったでしょう?周りに人がいるのによく平気であんな話が出来ますね)(やだ、何が恥ずかしいのヨ)(はあ…もういいです)



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