帰り道

 
偶然たまたま出会った赤茶色の子猫。

雨が降る路地裏、雨宿りもせず小さな箱の中ポツンと鳴くその子が可愛くて可哀相で、少しだけ寄り道をすることにした。

ビショビショになりながら猫の横にチョコンと座り空を見上げる。

「アンタも大変ね」

ニャアと返事をする猫にグレルは微笑み頭を撫でた。

「アタシはアンタを連れていけないけど、でもきっとアンタを大切にしてくれるヒトが現れるわ☆」

分ったのか分かってないのか「ニャー」と鳴きながらすり寄る猫。

フワフワなのだろう赤茶の毛は雨に濡れベトベト。今の自分もきっとそうなのだろうがどうする事もできない。

「予言したげる!アンタはきっと黒い毛のスマートな恋人が出来るわ。トビッきりかっこよくてSっぽくて…でも優しいヤツよ」

首を傾げた猫をそっと箱から抱き上げると、グレルは顔を綻ばせ鼻先にチュっと口付けた。

「アタシにも現われたんだから、赤を纏うアンタにも絶対現れるわ☆死神が言うんだから間違いなし!」

雨で冷たくなった手で猫を一度だけ抱き込むと、ある気配を感じグレルは猫を放した。

開放した猫とグレルの上に影ができ、空を見上げると見慣れた眼鏡と黒い傘が見えた。

不機嫌そうに寄せられた眉間の皺寄り添う猫達に手を振りグレルは空を見上げた。雨はもう止んでいる。

さしたままの傘にそっと触れると小さく囁いた。

「明日は晴れるといいわね」







終わり

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