休憩時間




 いつも面倒だ、サボりたいと思うほど忙しい仕事でも、一番心休まる時間がグレルにはあった。



「ウィル、クッキー食べる?」



 ルンルン気分と笑顔で休憩室に入るグレルの手には仕事中に見つけたお菓子屋さんで買ったクッキーがあった。



「ええ、頂きます。代わりに私は紅茶を淹れますよ」



「ンフッ♪ありがとう、ウィル」



 仕事中のウィリアムは超真面目モード、しかも相手がグレルであろうとも容赦なく厳しく接していたのだが、仕事外のプライベートや休憩時間だけ、グレルに対する態度が違った。



 どんなにグレルが引っ付こうが抱き付いて頬擦りをしようが、ウィリアムは嫌がる素振りを見せないどころかとことんグレルを甘やかしているのだ。



「はい、ウィル。アタシが食べさせて、ア・ゲ・ル♪」



 お揃いのマグカップ。三人用のソファーにお互い仲良く身体を密着させて座るウィリアムとグレル。



 グレルはクッキーを一つ手に取ると、ウィリアムの口元へと運んだ。そのクッキーをウィリアムは躊躇いもせずに口の中に入れる。



「どう?美味しい?」



「美味しいですよ。思わず貴方も食べてしまいたくなる」



 その言葉にグレルは頬を染めてウィリアムを見上げた。



「ウィル」



「グレル」



 互いの顔の距離が近づき、静かに瞳を閉じるグレルは一一一。



「ふぎゅ!?」



 突然何を思ったのかウィリアムはソファーから立ち上がったことにより、タイミング悪くグレルはソファーに顔面を埋めてしまう。



「そろそろ時間か」



 ソファーに沈むグレルに手を差しのべようとはせずに、ウィリアムは時計に視線を向けていた。



「デスクに戻って残りの仕事を片付けますよ。グレル・サトクリフ」



「ちょっと待ってよ!まだ三分も休憩時間が残ってるじゃない!」



「その三分は移動時間です。さあ、早く行かないとその鬱陶しい髪を引っ張ってでも連れていきますよ」



「痛い!痛いわ!いってるそばからもう引っ張ってるじゃない!」

 ギャーギャー騒ぐグレルなどお構いなしに、遠慮なく髪を掴んでズルズルと引きずるウィリアムたちは仕事場へと戻っていった。





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