『ねえカラ松』


「ンー?」


『わたしそろそろキスしたいなぁ』


「ン゙ッ!!?」




ゲホゲホとカラ松が盛大に噎せた。


カラ松と付き合ったのは今から3ヶ月前。
彼からの一方的な熱烈アタックに私が折れる形で付き合うことになったのだが、私もちゃんと彼のことを好きになったから付き合おうと思ったわけで。

付き合って3ヶ月、彼は私を大事に大事にしてくれた。
成人男性のくせにニートだからそうしょっちゅう買い物や遊園地や食事には行けないけど、公園でのんびりデートしたり家でごろごろしたり、それなりに楽しく過ごしていた。


ただ、その中で彼が私に手を出してくることは一切なかった。




『キス。ちゅーだよちゅー。そろそろしても良いんじゃない?』


「えッ!?ききききキス…!?……ま、まだ早いんじゃないか?」


『…3ヶ月って、世間一般から見て早いのかなあ』


「うっ…そ、そうでもないかもしれないな……」




一般的に付き合ってから初めてのキスが平均どれくらい経ってからなのかは知らないが、少なくとも3ヶ月経ってれば早過ぎるとは言えない気がする。それに関してはカラ松も同意のようだった。

付き合う前は会うたびに一本ずつバラの花を渡され、「君はあの輝くサンシャインよりもビューティフル」「今日も俺は君の熱い視線でヤケドをしてしまった」などと意味のわからない口説き文句を言われ、デートにも幾度となく誘われていたものだから、キスなんてそれこそ付き合った初日にでもしてくるものだと思っていた。

しかしそんなことはなく、なんだかんだで3ヶ月。キスのキの字も感じられないほど予兆がない。
あれだけ凄かった猛烈なアタックも、付き合い始めてからは必要なくなったのかやや控えめである。イタい言動は健在だが。




『カラ松がしてくれないならわたしからしちゃおうかな』


「っ!?まっ、ままま待つんだハニー!!いっいつの間にそんな積極的に…っ」


『たまにはいいじゃん……って、ん、…なにこれ』




カラ松を押し倒す勢いでぐいぐい迫っていたら、唇に何やら硬いものが当たった。カラ松の唇でないことは確かである。
“それ”を片手に持ったせいで体を支えるものがなくなったカラ松が床に倒れ、結果的に私が押し倒したような体勢になった。





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